結論:Hermes Agent は「自分のサーバーに住み着いて、一度やった作業のやり方を覚えたまま育っていくAIエージェント」です。多くのAIが会話を閉じるたびに記憶を失うのに対し、Hermes は解いた手順をスキルとして書き残し、次回はその続きから始めます。
AIエージェントの製品は増えましたが、Hermes Agent が注目されている理由は機能の多さではありません。記憶が消えないという一点です。この記事では、Hermes Agent が何をするものなのか、他のエージェントと何が違うのか、そして核心である記憶とスキルの仕組みを説明します。インストール手順は公式ドキュメントが正なので扱いません。ここで扱うのは「そもそも何者か」です。
「Hermes」という名前は2つある
最初に混乱を解いておきます。開発元の Nous Research は、Hermes という名前を2つの別物に使っています。
両者は独立していて、Hermes Agent は Hermes モデル以外のLLMでも動きます。検索で情報が混ざりやすいので、「モデルの話か、エージェントの話か」を意識して読み分けてください。
Hermes Agent とは何か
Hermes Agent は、2026年2月に Nous Research が公開したオープンソースのAIエージェントです。MITライセンスで、誰でも自由に使い、中身を読み、改造できます。
最大の特徴は、SaaSではなく自分の環境で動かす常駐プログラムだという点です。裏で起動しっぱなしになっていて、あなたが Slack やターミナルから話しかけると応答し、指示がなくても決まった時刻に自分で動きます。
flowchart LR U["あなた<br/>Slack / Discord / ターミナル"] <--> H H["Hermes Agent<br/>自分のマシンで常駐"] <--> L["LLM API<br/>考える頭脳"] H --> F["ファイル・コマンド<br/>Web・定期実行"] H <--> M["~/.hermes/<br/>記憶とスキル"]
頭脳であるLLMは外部のAPIを呼びますが、あなたのファイルや作業の履歴は自分のマシンに残ります。これが「自分のサーバーに住み着く」と表現される理由です。
何をするものなのか
エージェントに与えられている「手」は、おおむね次のとおりです。
- ファイルの読み書きと整理
- コマンドの実行(出力を読んで、次の手を自分で決める)
- ブラウザの操作とWeb検索
- 定期実行(毎朝この作業をやっておく、といった依頼)
- メッセージ基盤との接続:Telegram・Discord・Slack・WhatsApp・Signal・メールなど16以上
実行する場所も選べます。手元のマシンのほか、Docker のコンテナ内、SSH でつないだ別のサーバー、クラウドでも動かせます。
言い換えると、チャット欄ではなく、あなたの普段いる場所に常駐する作業者です。AIエージェントという言葉自体があいまいだと感じる場合は、先に AIエージェント|Wiki用語集 を読むと輪郭がつかめます。
他のAIエージェントと何が違うのか
機能を並べると他製品と似て見えますが、設計思想の違いは3つに集約できます。
1. 常駐している。 多くのエージェントは、あなたが起動したときだけ動く道具です。Hermes は起動しっぱなしのプロセスなので、あなたが見ていない時間にも仕事が進みます。
2. 記憶が消えない。 一般的なエージェントは、会話(セッション)が終われば文脈を失います。同じことを次も一から説明する必要があるわけです。Hermes は過去のやりとりを保存し、必要になったら自分で検索して読み直します。
3. 手順がスキルとして貯まる。 ここが本題なので、次の節で扱います。
たとえば Claude Code はコーディングに特化した強力なエージェントですが、設計としてはセッションごとに文脈を持つ道具で、長い作業では コンテキスト管理 —— つまり「何を覚えさせ、何を捨てるか」を人間が面倒みる前提になっています。Hermes はその面倒を、貯める側に倒して解こうとしています。どちらが優れているという話ではなく、開いて使う道具か、住み着いている同居人かという違いです。
記憶とスキルの仕組み
Hermes の核心はここです。永続データは ~/.hermes/ に置かれ、会話の記憶とスキルの2種類が貯まっていきます。
スキルとは、作業のやり方を書き残した手順書です。難しい問題を解いたとき、Hermes はその解き方をドキュメントとして保存します。次に似た依頼が来たら、手探りを繰り返さず、その手順書を読んでから始めます。
最初から40以上のスキルが組み込まれていて、そこに自分の使い方に合わせたスキルが足されていきます。書式は agentskills.io というオープンな標準に合わせてあるため、人が読める普通のドキュメントとして中身を確認でき、手で直すことも、他人と共有することもできます。ブラックボックスの「学習済みの何か」ではない、という点が重要です。
似た仕組みは他のエージェントにもあります。Claude Code の カスタムコマンドとスキル がそれです。違いは誰が書くかで、あちらは基本的に人が定型作業をまとめて置いておくもの、Hermes はエージェント自身が書いて増やしていくものです。
動かすための前提
概念として理解したうえで、自分が対象かどうかを判断するための条件を挙げておきます。
- OS:Linux、macOS、または WSL2。Windows でそのままは動きません(WSL2 経由になります)。
- 実行環境:Python が必要です。
- LLMのAPI:頭脳は外部のLLMを使うため、接続先とAPIキーが要ります。Nous Portal、多数のモデルをまとめて扱える OpenRouter、OpenAI互換のエンドポイント、自前で動かすローカルモデルのいずれかを選べます。LLMの利用料は自分持ちです。
- 性質の理解:Hermes は、あなたのマシンでファイルを触りコマンドを実行する常駐プロセスです。便利さと危うさは表裏で、どこまでの権限を渡すかは自分で決めることになります。
つまり、ターミナルとLinuxのファイル構成が分かっている人向けの道具です。裏を返せば、そこさえ越えれば入口に立てます。
ここから何を触ればいいか
Hermes Agent に触るための土台は、特別なものではありません。当サイトの無料レッスンで埋められます。
- ターミナルとLinux:
~/.hermes/のようなパス表記や、コマンドの読み方はここが出発点です。Linuxコース はブラウザ上の仮想ターミナルでそのまま実行できます(無料・登録不要・環境構築なし)。 - AIエージェントという考え方:AIエージェント|Wiki用語集 と LLM|Wiki用語集 で、頭脳と手足の関係を押さえる。
- エージェントを使う感覚:Claude Code コース は、AIエージェントに仕事を任せるときの考え方(依頼の粒度、検証のさせ方、権限の渡し方)をひと通り扱っています。製品は違っても、この感覚はそのまま転用できます。
まとめ
- Hermes Agent は、自分の環境に常駐するオープンソースのAIエージェント。
- 名前が同じ Hermes シリーズのLLMとは別物で、そちらは頭脳側。
- 他との違いは、常駐する・記憶が消えない・手順がスキルとして貯まるの3点。
- スキルは人が読めるドキュメントとして
~/.hermes/に貯まり、使うほど作業が速くなる。 - 前提は Linux 系の環境とLLMのAPIキー。触るなら、まず Linuxコース から。