導入
「COBOLって何の略か知っていますか?」と聞かれて答えられる人は多くありません。それもそのはず、COBOLは1959年——今から半世紀以上前に生まれた言語です。それなのに、なぜ今も現役で使われ続けているのでしょうか。答えは、COBOLが生まれたときの設計思想そのものにあります。
説明
COBOL は COmmon Business-Oriented Language(共通のビジネス指向言語)の略です。1959年、アメリカ国防総省の呼びかけで発足した委員会 CODASYL(Conference on Data Systems Languages)によって設計されました。当時は「同じプログラムなのに、コンピュータのメーカーが変わるとまったく書き直しになる」という問題が深刻でした。COBOLは次の2つを最重要の目標として作られました。
- ポータビリティ(移植性) … 特定のメーカーのハードウェアに縛られず、様々な機種で同じソースコードが動くこと。
- 可読性(英語に近い文法) … プログラマ以外の人(経理担当者や経営者)が読んでも、何をしているかおおよそ分かること。
この2つ目の目標のために、COBOLの文法は数式記号ではなく 英語の単語 をそのまま使います。たとえば「2つの数を足す」処理を比べてみましょう。
*> COBOLの書き方(英語の単語をそのまま使う)
ADD PRICE TO TOTAL.
多くの言語なら total += price; や total = total + price のように記号で書くところを、COBOLは ADD ... TO ... という英語の文として書きます。開発当時、この設計に大きく関わった人物の一人が、後に「バグ(bug)」という言葉を広めたことでも知られる海軍少将 グレース・ホッパー(Grace Hopper) です。彼女が開発した先行言語 FLOW-MATIC の考え方が、COBOLの「英語のように読める」文法に強く影響しています。
COBOLは特定の企業の製品ではなく、業界標準(ANSI/ISO規格) として標準化され、COBOL-68、COBOL-74、COBOL-85、COBOL-2002、COBOL-2014と版を重ねながら、60年以上にわたって現役であり続けています。
試すには
このレッスンではまだコードは書きません。次のレッスン以降で実際のプログラムを見ていきますが、「ADD PRICE TO TOTAL」のように英語の文として読める、という感覚だけ頭に置いておいてください。