導入
個々のリソースを最適化しても、「どの事業部が・どのプロジェクトが、いくら使っているか」が分からなければ、組織としてのコスト管理は成立しません。最後は、コストを統治する仕組みの話です。
説明
組織横断のコストガバナンスは、次の3つの道具を組み合わせて実現します。
| 道具 | 役割 |
|---|---|
| タグ戦略 | リソースに CostCenter Project Environment 等のタグを付け、コストを分解できる単位を作る |
| Cost Categories | アカウント・タグ・サービスなどのルールを組み合わせ、任意の切り口(事業部・プロダクト等)でコストを再分類する |
| 予算統制・チャージバック | 事業部ごとにBudgetsで予算上限を設定し、超過時に通知・アクションを取る。実費用を事業部へ按分請求(チャージバック)する |
コストガバナンスの土台になるのがタグ戦略です。タグ付けのルールを決めていない組織でリソースが増えると、後から「このEC2は誰のものか」が分からなくなり、コスト分析が不可能になります。SAPでは「タグ付けを強制するにはどうするか」という問いに対して、AWS Config のタグ必須ルールや、Service Control Policy(SCP)でタグなしリソースの作成を拒否するといった統制策が正解になります。
flowchart TD
T["タグ戦略を決める<br/>(CostCenter/Project/Env)"] --> E["SCP/Configで<br/>タグ付けを強制"]
E --> R["リソースに正しくタグが付く"]
R --> CC["Cost Categoriesで<br/>事業部/プロダクト単位に再分類"]
CC --> BU["事業部ごとにBudgetsで予算統制"]
BU --> CB["実費用を事業部へチャージバック"]
Cost Categories は、タグだけでなくアカウントやサービスなど複数の軸のルールを組み合わせて、請求データを任意の切り口(例:「プロダクトA」=複数のアカウント+特定のタグの合算)に再分類できる機能です。組織構造と請求上のアカウント構造が一致しない場合に威力を発揮します。
最終的には、事業部ごとにBudgetsで予算上限を監視しつつ、実際のコストをタグ・Cost Categoriesで事業部別に按分し、チャージバック(実費用を利用元の事業部に請求する)やショーバック(費用を可視化するだけで実際には請求しない)という形で、コスト意識を組織全体に浸透させます。
具体例
「どの事業部がいくら使っているか分からない」という大企業のコスト混乱を、順を追って統治します。
- タグ戦略を決める … 全リソースに
CostCenter・Project・Environmentを付けるルールを定義。これがコストを分解する単位になる。 - タグ付けを強制する … ルールを決めても現場は付け忘れる。→ AWS Configのタグ必須ルールで違反を検知、あるいはSCPでタグなしリソースの作成を拒否。ここが土台で、抜けると後段が全部崩れる。
- 事業部の切り口で再分類 … 組織構造と請求アカウント構造が一致しないので、Cost Categoriesで「プロダクトA=複数アカウント+特定タグの合算」のように再分類。
- 予算統制と按分 … 事業部ごとにBudgetsで予算上限を監視し、超過で通知。実費用を事業部へチャージバック(実際に請求)またはショーバック(可視化のみ)してコスト意識を根付かせる。
SAPで問われる順番は「まずタグを整備・強制し、それを土台に分析・予算統制する」。タグが整っていない状態でCost Categoriesや按分を議論しても土台が崩れる、という順序感覚が答えを分けます。
読んでみよう
コストガバナンスの問題は「まずタグを整備し、強制する仕組みを入れ、それを元に分析・予算統制する」という順番を理解しているかが問われます。タグが整っていない状態でCost Categoriesや按分の議論をしても土台が崩れることを意識してください。第9章まででドメイン3(既存改善)の主要テーマは一通り学び終えました。次章はいよいよ最後のドメイン、移行とモダナイゼーション、そして試験本番への総仕上げです。