導入
サーバーやDBだけでなく、大量のファイルデータそのものを移す場面もあります。数百TB〜PB級のデータを、限られたネットワーク帯域でどう運ぶか。「回線で送る」か「物理的に運ぶ」かの判断がSAPの定番です。
説明
まず判断の分かれ道は、ネットワーク経由(オンライン)か、物理デバイス経由(オフライン)かです。
flowchart TD
Data["移行するデータ量"] --> Calc{"今の回線帯域で<br/>現実的な時間内に転送できるか?"}
Calc -->|"できる"| Online["オンライン転送<br/>DataSync / Transfer Family / Storage Gateway"]
Calc -->|"できない(数週間〜数ヶ月かかる)"| Offline["オフライン転送<br/>Snow Family"]
判断の目安として、「AWSの回線帯域×利用可能な時間」で送りきれるデータ量かどうかを試算します。数十TB程度で高速な専用線があれば数日で送れますが、数百TB〜PB級のデータをオフィスの一般的な回線で送ると数ヶ月かかる、という計算になった場合は、オフライン転送を検討します。
オンライン転送の主なサービス
| サービス | 用途 |
|---|---|
| AWS DataSync | オンプレのファイルサーバー/NASとS3・EFS・FSx間を高速・自動で同期 |
| AWS Transfer Family | SFTP/FTPS/FTPのプロトコルのまま、既存クライアントを変えずS3・EFSへ転送 |
| AWS Storage Gateway | オンプレとS3をゲートウェイ経由でシームレスに繋ぎ、継続利用しながら段階移行 |
オフライン転送(Snow Family)
| デバイス | 容量目安 | 用途 |
|---|---|---|
| AWS Snowcone | 数TB | 小規模・エッジでの収集、コンパクトな現場向け |
| AWS Snowball(Edge) | 数十〜百TB級 | 一般的な大容量移行、エッジでのコンピューティングも可能 |
| AWS Snowmobile | エクサバイト級 | データセンター丸ごとの移行など超大容量 |
Snow Familyは物理デバイスをAWSから取り寄せ、オンプレでデータをコピーしてAWSへ返送する仕組みです。「ネットワークがそもそも脆弱・低速な拠点」「セキュリティ上ネットワーク経由の転送が禁止されている」といった制約がある場合にも有力な選択肢になります。
継続的な連携が必要なケース(移行完了後も一部オンプレ資産を使い続ける、段階的に移行するなど)では、Storage Gatewayでオンプレとクラウドをシームレスに繋ぎ、キャッシュ・階層化しながら徐々にクラウド側へデータを寄せていく、というアプローチも取られます。
具体例
放送局が、過去の映像アーカイブ500TBと、日々増える新規素材をAWSへ移す計画を、まず試算から始めます。
試算:オフィスの回線は実効1Gbps。500TBを送るには理論上でも約46日、業務トラフィックと競合すればもっと。期限内には非現実的——ここで方式が分かれます。
- 過去の500TB一括 → Snowball(Snow Family) … 物理デバイスを取り寄せ、社内でコピーして返送。回線を使わず数日で移せる。もしPB〜エクサ級ならSnowmobile(トラック)も。「回線が脆弱・低速」「セキュリティ上ネット転送が禁止」の拠点にも有効。
- 移行後、毎日増える新規素材の同期 → DataSync … 差分をオンラインで高速・自動同期。継続的な同期はこちら。
- 既存のSFTPクライアントを変えずに転送したい部署 → Transfer Family … プロトコルはそのままで保存先だけS3へ。
- 段階移行で当面オンプレも使い続ける → Storage Gateway … シームレスに繋ぎ、徐々にクラウドへ寄せる。
判断の起点は必ず帯域での試算。「PB級を限られた回線で期限内に」と読んだら、まず非現実的と気づきSnow Familyを候補に。「継続同期=DataSync、SFTP維持=Transfer Family」も対で覚えます。
読んでみよう
「PB級のデータを、限られた回線で、期限内に移したい」と読んだら、まず帯域での試算が非現実的であることに気づき、Snow Familyを候補に上げてください。逆に「継続的に同期し続けたい」「日々増えるファイルを移行し続けたい」ならDataSync、「既存のSFTPクライアントの仕組みを変えたくない」ならTransfer Family、というキーワード対応を押さえておきましょう。