導入
「クラウドは安い」と言われますが、何と比べて安いのでしょうか。サーバーの値札だけを見比べても答えは出ません。オンプレミスに本当にかかっているお金を並べてみると、クラウドが変えているのは値段そのものより「お金の払い方」だと分かります。
説明
出発点は、固定費(先にまとめて払う設備投資)と変動費(使った分だけ払う運用費)の違いです。
| オンプレミス | AWS | |
|---|---|---|
| 払い方 | サーバーを先に購入する設備投資(固定費) | 使った分だけの後払い(変動費) |
| 読みが外れたとき | 買った機器は残り、回収しにくい | 止めれば課金も止まる |
| 容量の決め方 | 3〜5年先を予測して多めに買う | 必要になってから増やす |
オンプレミスのコストは、サーバー本体の値段だけではありません。次のすべてが積み上がります。
- サーバー・ストレージ・ネットワーク機器の購入費と、数年ごとの買い替え(陳腐化への対応)
- データセンターの場所代(ラック代)・電力・空調
- 故障に備える保守契約と予備機
- 監視・パッチ適用・バックアップを回す運用の人件費
- 予測を外して使われずに遊んでいる余剰キャパシティ
これらを合計した総額をTCO(総所有コスト/Total Cost of Ownership)と呼びます。クラウドとオンプレミスは、サーバー単価ではなくこの TCO 同士で比べるのが正しい比較です。
AWS が値下げを続けられる理由が規模の経済(economies of scale)です。世界中の何百万もの利用者の需要がまとめられるため、AWS は機器も電力も桁違いに安く調達できます。その削減分が値下げとして利用者に還元されるので、自社1社の購買力では届かない単価を使えることになります。
コストを下げる打ち手も、ここで名前を押さえておきましょう。
| 打ち手 | 内容 |
|---|---|
| 適正なサイジング(ライトサイジング) | 実際の使用率を見て、大きすぎるインスタンスを1つ下のサイズへ。オンプレミスなら買い替えが必要な変更が、クラウドでは数分で済む |
| 自動化 | AWS CloudFormation でプロビジョニングと設定管理をコード化し、手作業の時間とミスを削る |
| マネージドサービスを使う | Amazon RDS・Amazon DynamoDB・Amazon ECS・Amazon EKS のように運用をAWSに任せ、自社の運用工数そのものを減らす |
最後にライセンスです。Windows ServerやSQL Serverのような商用ソフトをAWSで動かすとき、払い方は2通りあります。
- ライセンス込み(License Included)… AWSの利用料にソフトのライセンス料が含まれる方式。手持ちのライセンスがなくてもすぐ使い始められる。
- BYOL(Bring Your Own License=ライセンス持ち込み)… すでに買ってある自社ライセンスをAWSへ持ち込む方式。ライセンス条件によっては、物理サーバーを専有する Dedicated Host が必要になる。保有ライセンスの消費状況は AWS License Manager で追跡できる。
具体例
社内に自前のサーバーを置いている会社が、「月3万円のEC2にすると高くつくのでは」と悩みました。そこで、いま使っているオンプレミスのサーバー1台分の費用を1年あたりに割り戻してみました。
| 項目 | オンプレミス(1年あたり) | AWS |
|---|---|---|
| サーバー購入費 120万円を5年で償却 | 24万円 | 0円(購入しない) |
| データセンターのラック代・電力 | 18万円 | 利用料に含まれる |
| 保守契約・予備機 | 10万円 | 利用料に含まれる |
| 監視・パッチ当ての作業(月2時間) | 12万円 | マネージドサービスで削減 |
| 読み違えて余っている分 | 繁忙期に備えた2倍のサイズ | 必要になってから増やす |
サーバーの値札(120万円)だけを見ていたときには存在しなかった費用が、合計すると年60万円以上ありました。さらにこの会社は、適正なサイジングで繁忙期向けの余剰分をやめ、既存のWindows Serverライセンスは BYOL で持ち込んで二重払いを避けました。
「値札を比べるのではなく、TCOで比べる」。これがクラウドエコノミクスの考え方です。
読んでみよう
「固定費(設備投資)から変動費(使った分だけ)へ」「比べるのはサーバー単価ではなくTCO」「AWSが安いのは規模の経済」「持ち込みライセンス=BYOL、込み=ライセンス込み」。試験ではこの4点が言い換えで問われます。